Teruhisa Tajima / Logo designer of GHOST IN THE SHELL

Teruhisa Tajima / Logo designer of GHOST IN THE SHELL

『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のロゴを手掛けるに至った流れ。

今回ファッションブランド『名 / NA』の第一弾として『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を使用させて頂きますが、そもそも田島さんがロゴを手掛けるに至った流れを教えて下さい。

田島 : 士郎正宗さんの作品(士郎正宗:『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』原作者)とは『ブラックマジック M-66』という、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』以前の作品のビデオやレーザーディスクのデザインを担当させて頂いたことで関係があったんです。映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の押井守監督とも『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』以前に『機動警察パトレイバー』で仕事をしたので、その流れがあって僕に声がかかったんだと思います。

そんな流れで出来上がった『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のロゴですが、今観てどう感じますか?

田島 : そうですね……電脳世界の最先端感というよりは、今見ると随分”文学的”だなと感じます。使っている書体も「Bodoni」というクラシカルなものですし。当時(1995年)、僕はもうPCを使っていたんですけど、PCで使用できるパッケージとしてのフォントファミリーがまだそう多くは無かったんですね。その中でどうしてこの書体を選んだのかということは思い出せないのですが、さっきも言った通りやっぱり随分”文学的”に見えますね。日本語の『攻殻機動隊』というロゴの抑えとして英語のフォントを作ったのですが、日本語と英語の書体を同じ場面に登場させるというのは、かなり高度な技術が必要な事なんです。だからこの『GHOST IN THE SHELL』というロゴも日本語と同居させることを考えたバランスで作ったんだと思います。加えて海外版のポスターには『GHOST IN THE SHELL』というロゴしか使っていないので、このロゴ単体でも日本的な要素を感じれるようにしたかったという意図もあったのかも。

© 1998-2017 Morisawa Inc.

『GHOST IN THE SHELL』のロゴは、IN THEが閉じ込められている三角形が印象的でもありますよね。

田島 : これは制作の段階で読ませて頂いた士郎さんの原作の印象、「SHELLの中に閉じ込められている」という趣旨から来ているんだと思います。三角形の中に文字を入れるようなデザインは『GHOST IN THE SHELL』以外ではその後一切作っていないですから。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

2017年に公開されたハリウッド版『GHOST IN THE SHELL』も同じように三角形を使用していますよね。

田島 : 知人に「ハリウッド版も田島さんが作ったの?」って聞かれたんですけど、あれは僕じゃないんです(笑)。象徴的なデザインだと感じて貰えたから、ハリウッドの方も同じような三角形を使ったんでしょうね。僕が今作ったとしても同じように三角形を使って、サンセリフ体※のロゴを使ったデザインになる気がします。(※サンセリフ体 文字の線の端につけられる線や飾りの無い書体のこと)

田島さんは以降の『攻殻機動隊』シリーズのロゴも手掛けていらっしゃいますね。これらのロゴは統一感というよりもそれぞれが個性を持っているように見えます。

田島 : そうですね。統一感はあまりないですねぇ。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

もちろん元となる作品に寄り添うものだとは思うのですが、田島さんにとってロゴは単体で作品だという意識があったりするのでしょうか?

田島 : いや、それはないですね。例えば映画のタイトルロゴの場合だと、作品の序盤に出てくるものがほとんどですので、作品に寄り添う物であるべきだと思います。ロゴを単体で作品だと思ったことは無いかな。映画のパッケージやポスターに関してもそうですね。僕は作品に合わせてデザインをするタイプだと自分では思ってます。つまり無個性で作っているつもりなんです。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

でしたらこの『攻殻機動隊』シリーズのロゴの差は、純粋に作品の内容の違いから生まれたのでしょうか?

田島 : 『攻殻機動隊』シリーズに関して言うと、このシリーズはパッケージを面白くしようという発想があるんですよ。そうなるとデザインの段階でもっと先の事、最終的なパッケージのギミックを含めてデザインするので、その影響もありますね。作品の内容に関して言うとデザインの段階では制作中の場合が多いので、完全には僕も理解していないでデザインをしている場合も多いです。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』の時は神山健治監督と打ち合わせをしましたが、普段はロゴ制作の段階で監督さんと詳しく話し合うということはあまりないですね。『GHOST IN THE SHELL』の時なんかはロゴデザインについて詳しく打ち合わせをする相手もいなかったので、提出したデザイン案もこれ一つだった気がします。

当時はアニメを制作するという体制も今ほど整っていなかった?

田島 : そういう事だと思います。今だと制作委員会があって、そこでロゴも可否が出るのでちゃんとプレゼンをしないといけない気がします、なんとなく。

アニメ関係のお仕事をする前と後では何か変わったことはありますか?

田島 : 変わったというか、アニメ関係では割と制約無く自由にやらせて頂いていますね。ちゃんとしないといけない気がすると言ったばかりですか(笑)。だから『攻殻機動隊』シリーズも面白いパッケージが作れています。CDやレコードのデザインは90年代ごろから色々な制約が増えてきて、本当に自由にやっていたのは尾崎豊君の作品くらいですね。

©名 / NA

最新ツールにチャレンジし続ける写真家。

技術的なお話も伺って行きたいのですが、『GHOST IN THE SHELL』の頃はもうPC中心で作業してらしたのですか?

田島 : 僕自身は使っていましたが、当時はPhotoshopを使いこなせる人というのがあまりいなかったので、先方からセル画を頂いてそれを加工する時に使うとかそういう使い方でしたね。『Ghost in the Shell 25th Anniversary』のBlu-rayのジャケットに使われている絵はまさにそうやって作ったもので、紙に書いた線画だけを頂き、色付けやその他のデザインなどは全て僕がやっています。

©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
©1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

田島さんはPhotoshopを出始めの頃から使用しているとお聞きしているのですが、当時は使用に関してのハードルがものすごく高かったのではないですか?

田島 : 僕はもうAdobeさんも所有していないシリアル20番代のPhotoshopを持っていますからね(笑)。ハードルは確かに高かったですね。当時はアナログ素材が主なので、Photoshopを使うにはスキャナーが無いと話にならなかったんです。でもそのスキャナーもすごく高くて、その上一枚取り込むのにRGBスキャンで色ごとに3回スキャンする必要があって、50分程かかったりして色々大変でしたね。でも高価な物であるだけあって、今僕が使っているスキャナーよりも取り込んだものは優れていたと思います。そうして取り込んだ写真も、Photoshop内にレイヤーが存在しなかったので、デジタルなのにすごく気を使って作業をしていましたね。一度合成したらもう動かせなかったから(笑)。

©名 / NA

Photoshopを最初に使用した仕事のことは覚えていますか?

田島 : 初めてはこの辺じゃないかなぁ(DINOPIXを観ながら)。風景の写真と海洋堂さんの模型を合成してるんです。これでファイルサイズは10メガとかだったかなぁ。でもさっきも言った通りスキャナーが優れていたので、B全くらいまで引き延ばしても全然大丈夫なんですよ。

こちらの作品はCGを使うよりもむしろ本物の恐竜の様な雰囲気がありますよね。

田島 : 僕はカメラマンでもあるので、ライティングについては合成時を意識して作るようにしています。イラストだとつい詳しく描いてしまう一方、写真だと暗くて見えない部分はしのまま暗くしてあげると、それがリアリティに繋がったりするんです。この作品は環境を描きたくて、なんとなく恐竜がそこにいる環境というのをイメージしてのこの形ですね。「GUNDAM PHOTOGRAPHY Fly in Black」なんかも写真なんだけど、パーツごとに分けて撮影してそれを組み合わせてPhotoshop上で作ってるんです。小さい物を大きく見えるように撮影するのって難しいんですよね。普通に撮るとピントの問題でどうやっても小さい物にしか見えないんですよ。

その後CGを扱うようになった際にはどんなソフトを使用していたのですか?

田島 : STRATA 3Dですね。たぶん今はもうフリーウェアになっていると思うんだけど……。

田島さんは様々な新しいツールにチャレンジしてモノにしていっているイメージがあるのですが、それはどういった意識からなのですか?

田島 : 単純に人よりも出来ることを一つ増やしたら世界が広がると思うんですよね。僕にとってそうやって世界を広げてくれたのが写真で、最初はカメラマンさんに自分が思い描いている絵を頑張って伝えるよりも自分が撮れるようになった方が早いってことから始めたことではあったんですけど。写真的な発想が出来るようになったから今の僕のスタイルがあるんだと思います。

©名 / NA

映像作品の構想なども持っていたりするのでしょうか?

田島 : コンサート映像とかはよく作りますね。それ以外だと今度渋谷のヒカリエで浜田省吾さんの展覧会“浜田島Ⅴ”をやらせて頂くんですけど、そこでも映像作品を5,6本発表する予定があります。“浜田島Ⅴ”では前に名古屋でやった時より規模が倍くらいで、立体作品なんかもあるので結構面白くなると思います。

是非行かせて頂きます。今日は長時間ありがとうございました!

 

取材・文春川三咲

翻訳・Brittany Anna I

田島照久
アート・ディレクター、グラフィック・デザイナー、写真家、THESDAYS主宰。
1949年福岡県生まれ、多摩美術大学グラフィック・デザイン科卒業。
CBSソニー(現SonyMusic Labels Inc.)デザイン室の勤務を経て渡米、1980年よりフリーランスとなり、1992年に現在のデザインプロダクション "THESEDAYS" を設立。
浜田省吾、尾崎豊をはじめとする多くのミュージシャンの撮影とパッケージカバーのアート・ディレクターを務める。
以降、仕事はエディトリアル、ポスター、広告、カレンダー、写真集、小説やコミックの装丁などグラフィック全般に及ぶ。
アニメーション関連のデザインも多く「攻殻機動隊」や「機動警察パトレイバー」などは企画の起ち上げ時から関わっている。
MACの創成期からコンピュータによるデジタルデザイン、デジタルフォトグラフィーに表現分野を拡げ、1994年に世界初のCGによる恐竜写真集 "DINOPIX" を発表、欧米でも出版される。
自身による著書として、CG写真集、アナログ写真集、デザイン本、小説などがある。
近年はPremierProを使った映像制作にも積極的に取り組んでいる。

■浜田島V
於: 渋谷ヒカリエホール9F
2017年12月21日▷2018年1月8日

EXHIBITION PLACE
▼会場:東京・渋谷ヒカリエ9階
ヒカリエホール ホールA
※作品展に関する会場への直接のお問合せはお控え下さい

OPENING DAYS
▼開催期間:2017年12月21日(木)~2018年1月8日(月・祝)
※2018年1月1日(月・祝)は全館休業日

OPENING HOURS
▼開催時間:開場 11:00 / 閉場 21:00 
最終入場は閉場の60分前まで) ※但し2017年12月31日(日)、2018年1月2日(火)、1月8日(月・祝)は18:00閉場

▼URL: http://shogo.r-s.co.jp/hamadajima/index.html